料理人 野﨑洋光

Vol.8味に特徴のある「豆味噌」「白味噌」の
使い方・味わい方

top

豆味噌と白味噌は、まず見た目で
和食料理人の心をくすぐります

前回は、北日本・東日本に普及している辛口の米味噌、西日本でよく使われている麦味噌が、ふだんの家庭料理に使いやすい万能味噌であることを、野﨑さんから教えていただきました。今回のテーマの中京地区の「豆味噌」と、関西でよく使われる甘口の米味噌である「白味噌」について、野﨑さんは「和食料理人が好む味噌」だとおっしゃいます。

detail01

「どちらの味噌も、まず見た目、色がいいんですよ。豆味噌は黒いから、器の上でデザインがしやすいんです。黒の美しさを表現できるんです。例えば、おでんや味噌カツなどは、豆味噌の黒いたれの色がきいていますよね。一方、白味噌は味噌に色をつけやすい。木の芽をまぜれば鮮やかな緑色になるし、和辛子をまぜれば黄色みを帯びる。どちらも料理を華やかに演出できる味噌なんです」

辛口の米味噌は淡色や赤茶色で、麦味噌は灰色っぽく、華やかな演出はなかなかできないので、お店ではそれほど頻繁には使わないとのこと。対して、豆味噌と白味噌は見た目だけでなく、味にも特徴があるので、野﨑さんはそれぞれに合った使い方を料理人として50年間探究し続けてきました。

豆味噌は
うま味の強い食材と
よく合います

「豆味噌は、塩みと辛みが強いので、1つの料理に量を多くは使えません。ということは、味噌のうま味の量も控えめになります。だから、豆味噌にはうま味の強い食材を合わせるとバランスがよくなるのです。鶏肉にはよく合いますね。味噌煮込みうどんにも鶏肉が入っているでしょ。そのほかにも、クセの強い青背の魚、さばなどにも合いますね」

また、家庭ではあまり使いませんが、鴨、猪、鹿などのジビエ系の肉料理にも、豆味噌の相性はいいそう。

「セロリやみょうがなどの香りの強い野菜や、バジルなどのハーブと合わせるのもおすすめです。豆味噌にはえぐみ、渋み、苦みがあるのですが、それが香りの強い野菜とうまく調和して、すごくおいしくなるんですよ。苦みに対して苦みを合わせるという感覚です」

detail02

和食にセロリ⁉と思われるかもしれませんが、セロリは江戸時代には「清正にんじん」と言われて、すでに日本に伝わっていたそう。1592年に豊臣秀吉の命によって、加藤清正が朝鮮へ出兵しますが、そのときに日本に持ち帰ったとされています。

「今では洋風の食材と思われているものでも、セロリのように日本で古くから使われているものがけっこうありますし、和風、洋風にこだわらずにハーブもどんどん使っていけばいいと思いますよ。それに、豆味噌のすっきりとした味は暑い夏によく合うんですね。ハーブはもちろん、なす、オクラなど夏の野菜にもよく合います」

detail03

そして、豆味噌でもう1つ知っておいてほしいことがあるという野﨑さん。

「豆味噌は味噌汁にすると赤っぽいので赤味噌と呼ぶ人も多いですが、赤だし味噌とは違うということを知っていますか。赤だし味噌は、豆味噌に米味噌やだしを加えた加工味噌で、豆味噌の臭みが苦手な人でも食べやすいようです。もちろん、好みなので、ふだんの味噌汁などは赤だし味噌を使うのもいいと思いますが、レシピの材料表に豆味噌と書いてあるときには、ぜひ豆味噌を使って、特有のえぐみや渋み、苦みを味わってみてほしいですね」

白味噌は見た目も
味も変幻自在

detail04

「白味噌は、大豆10に対して米糀20程度で作られるので、米糀のうま味がたっぷりで米の甘みも感じられます。塩分はほかの味噌に比べると控えめなので、1つの料理に対して多く使うことができます。うま味が豊富な味噌を多めに使えるわけですから、食材はうま味の強い肉や魚介でなくてもいいわけなんです」

そんなうま味たっぷりの白味噌を味噌汁に使うときは、具は野菜だけでもいい、と野﨑さんは語ります。

「野菜のほかに、海藻や麩なども相性がいいと思います。淡白な味わいの具だけで十分、しかも具だくさんにしなくても、十分おいしいと思いますよ」

今回紹介している『里いもと生麩の味噌汁』も、主材料は里いもと生麩の2種で、けしてうま味が強い食材ではありません。

「生麩は焼いてコクを加え、白味噌のうま味と調和させています。煮物感覚で食べられる味噌汁に仕立てました」

detail05

また、白味噌は塩分が控えめなので、「木の芽味噌」や「辛子味噌」などのように色をつけやすいだけでなく、味もつけ加えやすいのも魅力だそう。

「Vol.5で紹介した『鶏肉のソテー トマト味噌のせ』は、白味噌で作った玉味噌にトマトケチャップをまぜて、トマト風味の赤みがかったソースにしています。ほかに、チーズなどの乳製品をまぜてまったりとした白いソースにしてもおいしい。味に変化をつけやすく和洋折衷的な使い方もできるのが、白味噌の魅力なんですよね」

また、白味噌を使った料理は、単品のごちそうになると考える野﨑さん。

「まったりとした白味噌で作った料理は、ごはんのおかずというよりも、単品のごちそうとして味わうのがおすすめですね。白味噌は高級感もありますしね。また、とろりとした舌ざわりも魅力で、冬に使いたくなる味噌なんです。白味噌仕立ての煮物はまろやかな口当たりで、ほっとする感じがします。寒い季節に食べたくなる味わいですよ」

野﨑さんが長年料理長をつとめてきた「とく山」「分とく山」では、季節に合わせたおまかせコースをお客様に提供してきました。コース料理の中で味にメリハリをもたせるために、豆味噌と白味噌を活用されてきたという野﨑さん。

「ご家庭でも、毎日の料理に変化をつけたいときには、ぜひ豆味噌と白味噌をとり入れてみてくださいね」

里いもと生麩の味噌汁

里いもと生麩の味噌汁

材料(2人分)

  • 里いも

    200g

  • 生麩

    40g

  • 三つ葉

    4本

  • 和辛子

    適量

  • こぶ

    5㎝角

  • 味噌(おすすめは「京都白みそ」)

    50g

作り方

  1. 里いもは皮をむいて一口大に切り、さっとゆでる。

  2. 生麩は魚焼きグリルで焼き目がつく程度に焼く。あら熱がとれたら一口大に切る。

  3. 三つ葉は2㎝長さに切る。

  4. 鍋に水1.5カップ、こぶ、1を入れて中火にかけて煮る。里いもがやわらかくなったら味噌をとき入れる。さっと煮たら2を加えて煮て、生麩が温まったら3を加えてさっと煮る。椀に盛り、和辛子を添える。

「里いもと生麩の味噌汁」に
おすすめの蔵乃屋の味噌

京都白みそ

京都白みそ

「里いもと生麩の味噌汁」のおいしさの決め手は、白味噌です。塩分が5%以下の甘みそで、上品な味わいの京都白みそで、ぜひこの料理を作ってみてください。

『料理人 野﨑洋光』を観る

青森かねさみそ