料理人 野﨑洋光

Vol.15味噌で旅をする

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新しい味噌との出合いが
たくさんありました

この連載もいよいよ最終回を迎えます。二十歳の頃から50年以上も和食料理人として第一線を走ってきた野﨑洋光さん。蔵乃屋の味噌との出合いは特別なものだったと語ります。

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「ふだん我々の和食料理店で使う味噌といえば、白味噌と八丁味噌がほとんどです。信州味噌を代表とする淡色の米味噌や麦味噌などは、実はあまりお店で使ったことがありませんでした。今回、蔵乃屋さんで日本全国のさまざまな味噌に出合い、味わったことのない味噌なども試食させてもらいました。目で見て、舌で味を感じて、どんな食材に合うか発想が広がって……それはそれは楽しい体験でした」

特に、麦味噌には新しい発見があったと野﨑さんは感じています。

「麦味噌はどんな食材にも調和する味わいと香りで、毎日の料理にとても使いやすいと思いました。口当たりが優しく、まろやかだから、脂分の多い食材と合わせると特にバランスがいいかもしれませんね。僕が初めて麦味噌を食べたのは、鹿児島に旅行に行ったときです。旅館で麦味噌を使った豚汁を出していただいたのですが、こってりとした豚肉にあっさりとした麦味噌が本当によく合って、これはおいしい!と感動したものでした」

食べたことはあっても、実際に麦味噌を使ったレシピを紹介したのはVol.10の「味噌すき焼き」が初めてと言っていいほどだそう。

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「すき焼きに味噌、というと、味が濃くこってりとした印象があるかもしれませんが、麦味噌を使っているのでまろやかで優しい味わいです。ごはんがすすみますよ」

また、三重県にある蔵乃屋VISON店では、「味噌の仕込み」も体験されたのだとか。

「2カ月間熟成させた味噌はフレッシュ感があり、麹が引き出す甘さがおいしいと感じました。こんなに熟成期間が短い味噌を食べたのは初めてですね。その後4カ月間熟成させたものは赤みをおびてコクが出始め、6カ月間熟成させたものは褐色になり、甘みが増して香ばしく、まろやかに仕上がっていました。熟成期間によって、それぞれの香りや味わいの違いを知ることができ、とてもいい勉強になったと思います」

蔵乃屋のVISON店では「仕込み体験教室」を毎日開催しているそうです。皆さんもぜひ体験してみてください。

地方の産物を合わせて
旅気分を味わう

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「僕は旅が大好きです。その土地の散策をして、その土地の産物を知り、産物を使った料理を食べるのが旅の醍醐味。だから、地方の産物を手に入れたら、家にいても料理で旅をすることができるんです」

なるほど、同じ地方の産物どうしを組み合わせて料理をすれば、その土地の味を体験することができるんですね。それはまさに旅気分。今回紹介している「じゃこナッツ味噌」もその発想から生まれたレシピだそう。

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「今回は『瀬戸内麦米合わせみそ』を使ってレシピを考えました。麹割合が20割で麦味噌と米味噌をブレンドした贅沢な味噌です。そして、その瀬戸内の味噌に瀬戸内海の産物を合わせるとしたら、ちょっと贅沢なちりめんじゃこが合うのでは、とひらめきました。瀬戸内の穏やかでさわやかな海を思い浮かべながら、甘めの味噌に青じそやねぎの風味を加えてさわやかな味に仕上げました」

味噌はその土地を代表する味だ、と考える野﨑さん。だから、料理で旅をしようと思ったときには、味噌をまず選び、それからその味噌の地域の名物食材から合わせる食材を考えるのがおすすめとのこと。みなさんも味噌で旅気分を味わってみませんか。

そして、
味噌は郷愁の味

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「僕の家では、かつては祖母や母が味噌を仕込んでいて、辛口の米味噌でした。その味噌で作る、大根と油揚げの味噌汁は、たまらないおいしさだったなぁ。今でもよく思い出して作ります。以前にもお話しましたが、人生の旅の最後に食べたいのは、お味噌汁と白ごはん。僕にとって味噌は、郷愁の味。味わうとほっとする、気持ちをなごませてくれる味は味噌なんですね」

旅行から帰ったら、我が家の味でほっとする。日本全国の味噌で旅をしたら、ふだんよく使う味噌に戻る。そんな「ハレ」と「ケ」といったメリハリのある食生活にも、味噌は一役買ってくれることでしょう。

じゃこナッツ味噌

じゃこナッツ味噌

材料(作りやすい分量)

  • ちりめんじゃこ……50g

  • カシューナッツ……100g

  • 青じそのせん切り……10枚分

  • ねぎのあらみじん切り……30g

  • ごま油……大さじ1

  • 合わせ味噌

    • 味噌(おすすめは『瀬戸内麦米合わせみそ』)……80g

    • 砂糖……25g

    • ごま油……大さじ1

    • 水……大さじ2

作り方

  1. 合わせ味噌の材料をまぜる。

  2. フライパンにごま油大さじ1を中火で熱し、ちりめんじゃこ、カシューナッツを入れ、カシューナッツが薄く色づくまで2~3分いためる。青じそ、ねぎ、①を加え、全体に火が通るまで2~3分いためる。
    ※冷めてから保存容器に入れる。冷蔵庫で2週間保存可能。

「じゃこナッツ味噌」に
おすすめの蔵乃屋の味噌

瀬戸内麦米合わせみそ

瀬戸内麦米合わせみそ

「じゃこナッツ味噌」のおいしさの決め手は、この味噌です。麦こうじと米こうじで仕込んだ、味わい深い無添加合わせみそで、ぜひこの料理を作ってみてください。

『料理人 野﨑洋光』を観る

信州二十五割糀みそ 粒